雑記:僕の邦楽ベストアルバム2019

2019年は、なにか目に見えて大きな出来事があったわけではないですが、魂が揺らされ続ける毎日でしんどかったです。でも、良い音楽に沢山出会えたという確信はあります。

というわけで、今年聴いた邦楽のマイベストランキングについてのお話です。
以下詳細(過去と同じです)

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■題名

2019年(マイ)ベストアルバムベスト10


■目的

僕が今年の音楽を回顧&整理すること


■内容

19年邦楽におけるマイベスト10の作成
※19年邦楽とは、2019年に日本人名義で発売されたVarious Artist名義を除くアルバム・EPをさす。
※アルバム・EPは通しで一周以上聴いたもののみが選考対象


■基準

僕が出会って良かったと思えた順

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10位 DYSTOPIA ROMANCE 4.0/ Have a nice day!

 

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■一言紹介

"今ここにある"毎日に影を落とす絶望を肯定するアウトプットにハバナイの精巧さを感じる名盤。

■コメント

ハバナイは、たとえば”若さ”を歌うとしたら「”どういう若さ”が自分の聴衆に刺さるか」を良く分かっているなと思っていて、なんというかアイドル性があるんだと思っています(因みに、この部門の日本人トップは椎名林檎です)。

という前提を頭の片隅に置きつつ今作を聞くと、より卑近な内容になっているように感じます。具体的には、これまで以上に歌詞が人間くさくて、メロディが優しくて、曲順が小粋になっている(一番最後は彼らの代名詞であるForever Young!)。

これらを踏まえてハバナイが今作でアウトプットしているのは

①僕らの弱さ、生きづらさや絶望という今ここにある存在を受容すること(歌詞)

②その上で、それを肯定する優しさを表現すること(メロディ)

③その上で、今日この瞬間以降に光を見せること(曲順)

という風に考えられるのかなと。

だから、「DYSTOPIA ROMANCE」というタイトルで、それが「4.0」で、アルバムのジャケットが手書きの曲順なのかな、と思っています。※これまでのジャケットは以下の写真参照

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ちなみに、ROMANCEって中世ヨーロッパでは民衆のものって意味がありますよね。

DYSTOPIA ROMANCE 4.0

DYSTOPIA ROMANCE 4.0

  • Have a Nice Day!
  • J-Pop
  • ¥1833

https://music.apple.com/jp/album/dystopia-romance-4-0/1484106739

 

9位 can i love you? / Fukai Nana

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■一言紹介

日本人とイタリア人の混成バンド。シンプルに曲の出来がよすぎる。

■コメント

これは、本当に曲の良さがずば抜けているバンドとそのEP。シューゲイズっぽいギターで衝動性がある一方で、音の数が多くないから緩急が効いてて演奏がとにかく映える。朴訥なギターも◎。

これからも変な混じり気なく、自分たちが思う良さを追求する純粋意思みたいなものをアウトプットし続けてほしいと思います。寄り添うことも、導くこともどちらも人生の光だから。

https://music.apple.com/jp/album/can-i-love-you-ep/1463020437

 

8位 海と宇宙の子供たち / Masion Book Girl

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■一言紹介

変拍子の曲に、命のないボーカルが追い付いてきていて、音楽としての止揚が見えてきている一枚。

■コメント

僕はこの一年は最高だったと喧伝しまくってるんだけど、その中身はずっとひどいことばかりで、でも泥水すすることが必要だと確信していたから、そう言い続けているだけでありました。

僕は自分のことは普通のやつだと喧伝しまくってるんだけど、その中身はどうやら人とずれているらしく、それでもこの世界は歪んでいるなと(その世界とやらが何なのかもわからずに)確信していたから、そう言い続けているだけでありました。

僕は自分のことが大好きだと喧伝しまくってるんだけど、その中身は空っぽで自分の価値観になけなしのスペックを味付けしていくしかないと確信していから、そう言い続けているだけでありました。

嘘が本当になるためには石を積んでいくしかない気がして、それは生き方としても結論としても全然クールじゃない気がするんだけど、そこに光があるかもしれないと思ったから、このアルバムをベスト10にいれました。

https://music.apple.com/jp/album/%25E6%25B5%25B7%25E3%2581%25A8%25E5%25AE%2587%25E5%25AE%2599%25E3%2581%25AE%25E5%25AD%2590%25E4%25BE%259B%25E3%2581%259F%25E3%2581%25A1/1488298727

 

7位 ジャズ / ドレスコーズ

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■一言紹介

志磨遼平が天才だと再々認識する話。

■コメント

僕は前から、音楽の評価尺度は「多様性」「新規性」「商業性」「情動性」「時代性」の5つが中心で、それに加えてその人の美的感覚が少しあるかなくらいに思っているんですけど、この中で特にアウトプットするのが難しいのって「多様性」と「情動性」だと思うんですよね。

多様性って受容するのは簡単で。なぜならばアウトプットは内容を包む表現方法によってその鋭さが・味が全然変わるから。でも発信するのは難しい。その人が言語化できるということは思考として、少なくともそれを世界の一要素として納得していないとアウトプットできないから。

僕たちは常に異質な他者を嫌う。だから恣意的な尺度を作る。身分制度、性別、政治イデオロギー。だから自分の中で人を相対比較する、運動能力、学力、趣味の社会性。

それらを克己したとき、異なるものを受容したとき、僕たちコアを中心に大きくなっていくんじゃないですかね。その球体がきっと20年代を照らす気がするなとそう思います。

https://music.apple.com/jp/album/%25E3%2582%25B8%25E3%2583%25A3%25E3%2582%25BA/1458681859

 

6位 Shinjuiku Jumpshot / Shinjuku Jumpshot

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■一言紹介

何者かよくわかっていないけど、とにかく曲がよかった。

■コメント

普通に音楽についてのコメントを書くと、Shinjuku Jumpshotっていうのはただ曲だけで出してその中身は一切謎に包まれている集団で。(ぜひShinjuku Jumpshotで検索してみてほしい)だから、音楽はここにあるけどShinjuiku Jumpshotは今ここにいないみたい。

E・Hカーが「歴史とは恣意的な尺度である」みたいなことを言っていたんですけど、これって万物においてそうなんですよね。背景情報を知ると必然的に物事をみる純度はさがる(これはメタ的に物事を見ることの欠点とも通じる話だけど)。

というわけで、このアルバムにコメントをするのは無しだなと思いなおしました。終わり。聴いた人は僕と話しましょう。

Shinjuku Jumpshot

Shinjuku Jumpshot

  • Shinjuku Jumpshot
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1528

https://music.apple.com/jp/album/shinjuku-jumpshot/1484281804

 

5位 えあにに / 長谷川白紙

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■一言紹介

若き天才が時代をめちゃくちゃ先取りしていて閃光だなって思った話。

■コメント

長谷川白紙っていうのは20代の音大生らしくて、曲を作る上での引き出しもすごく豊富。ジャズ要素もあればダンサンブルでもあり、歌詞も日本語に留まらない(というか、収録曲の「悪魔」とかはもう歌詞でもなんでもない)、ダブステップかと思いきやベースミュージックもあり。

で、それだけなら「多様性と新規性がすごいですね」で終わるんだけど、

エアにに

エアにに

  • 長谷川白紙
  • J-Pop
  • ¥2139

https://music.apple.com/jp/album/%25E3%2582%25A8%25E3%2582%25A2%25E3%2581%25AB%25E3%2581%25AB/1485350147

 

4位 NIGHT FLOW / パソコン音楽クラブ

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■一言紹介

日常感と、その中にある非日常感を味わいながら世界を浮遊できる田舎の夜道に聴きたい一品。

■コメント

パソコン音楽クラブは、どうしてもその出自が注目されがちだけど、日常のおかしさ・非日常感・みたいなものを切り取るのがすごくうまいと思う。個人的にはこれは表現者の必要条件的な素養だと思っているんだけど、これは前作から変わらず見える傾向。(前回も夜の熱海に光るジョナサンがジャケットになっている)

ところで、日常のアンテナが強い人って往々にして能力(便宜上能力と表現する)が高いと思われがちな気がしていて(僕たちは自分が思考していないことに言及されるとそれを興味深いとまずは思いがちだ(と少なくとも僕は思う)から)、僕自身は少なくとも完全にそうなんだけど、こういう人たちって世界にある自分をふとした時に客体にできるんだろうな、と思うんですよね。

で、ここからは自分が体感したことがないからもう主観ですらもない気がするけど、客体になると何ができるかって、自分のコアを中心として相反するもの、そうでなくても大きく異なる異質な他者(ここでいう他者は自分以外の”モノ”すべてをさします)をとらえることができると思うんですよね。そうして人の世界は広がっていくんじゃないかな。

そんな風に出来上がった”世界”、めっちゃ期待できますね。

Night Flow

Night Flow

  • パソコン音楽クラブ
  • エレクトロニック
  • ¥1833

https://music.apple.com/jp/album/night-flow/1476658039

 

ここから上位3ついきます。

 

 

3位 834.194 / サカナクション

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■一言紹介

”今この瞬間”と地続きだけど明確に異なる世界を視認させてくれる名盤。

■コメント

個人的には、このアルバムのテーマは「”今ここ”と”ここでない世界”」だと思っている。タイトル名の数字は東京から札幌のスタジオの距離だというし、歌っている楽曲は過去の話、並行世界の話など、二項対立な話が多様に語られている(ように思う)。

具体的には

・”今ここの絶望”と、”その先の光”(グッドバイ)

・”花散ること”と”花咲くこと”(蓮の花)

・”真剣なあの子”と”それに比べてそうでない自分”(マッチとピーナッツ)

・”マイノリティ”と”そうでないもの”(モス)

・”生”と”死”(セプテンバー)

・”不出来な自分”と”その先の光”(さよならはエモーション)

・”今”と”並行世界”(忘れられないの・多分、風・新宝島

といったように。

で、別にそうした”ここでないどこか”に対してオナニー的な回顧をするわけでもなく、それがあるということをアウトプットし、そこに真摯に向き合っている。

そしてその姿勢こそが俺たちの目指すところであり、そうした丁寧丁寧丁寧な姿こそが今日もダメな俺たちにとっての光だと思うんですよね。

 

さらに言うと、実は今回10~4位までのそれぞれで僕が感じたことはこの一枚で触れられていたのかなとも思っています。

・絶望を受容し、そこに向かう光(DYSTOPIA ROMANCE 4.0)

・純粋意思を貴ぶこと(can i love you?)

・自己嫌悪で苦しい中でも石を積んでいくこと(海と宇宙の子供たち)

・多様性に不寛容な自分を克己すること(ジャズ)

・”今ここにない”世界の話のこと(Shinjuku Jumpshot)

・自分の不出来を嘆くこと(エアにに)

・並行世界のことを今想うこと(NIGHT FLOW)

 

もしかしたら山口一郎はなりたい大人のうちの一人かもしれない。でも今はたどり着けない。

https://music.apple.com/jp/album/834-194/1465208767

 

2位 so kakkoii 宇宙 / 小沢健二

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■一言紹介

神の導き

■コメント

多様性に真摯に向き合ったのがサカナクションなら、そうした多様性に苦しむことも含めて"今ここにある"宇宙(ところで、宇宙ってなんだよっていうのがこのアルバムの最高に面白いところの一つだと思います)なんだよと言ってくれるのがこの一枚。

そんなこと言われたら、こんなに毎日辛いのに「良くなっていくんだ俺たちは」って思ってしまうじゃないですか。

www.utamap.com

www.utamap.com

無限の海は広く深く、でもそれほどの怖さはないんだって。マジで聴きながら何回泣いたかわからないし、何なら今も泣いてます。

何かの間違いで自分が50歳になっていたとき、俺は小沢健二になれているのだろうか?

https://music.apple.com/jp/album/so-kakkoii-pluriverse/1486690775

 

今年のアルバムはこれがダントツ一位で2019年は閉店だと思っていました。

1位のアルバムを聴くまでは。

 

1位 Piercing / 小袋成彬

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■一言紹介

アルバムを通して聴かないといけない。例外はない。

■アルバム

やっぱり、メッセージ性も大事なんだけど、言語化できるサムシングを超えたパワーに俺たちは全面降伏なんだよな。全曲、というかこのアルバムで一曲だけど、スキがなさすぎるだろ。この光は眩しすぎる。もう何も言えない。悔しい。語れない。リベラルアーツと音楽技術の引き出しが甚だしく不足している。2019年に同い年の人間がこんなアウトプットしてるのかよ。

Piercing

Piercing

https://music.apple.com/jp/album/piercing/1490359112

 

 

 

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本当に僕は未熟で、表現できないものもたくさんあるし、

何なら表現できているつもりでもその実何も分かっていなかったこともある。

 

毎日の生きづらさを受容することもできないし、

そのくせ他者の生きづらさに寄り添えるわけでもないし、

純粋意思を貴べずに混じり気ある自分をすごしているし、

当然これまでの27年間で何も石は積んでこれなかったし、

時代の価値観に振り回されているもんだから多様性に寛容でありたいと言いながら全然そうじゃないし、

並行世界をすぐ逃げ道に使うし、

自分が大好きなものも表現できないし、

日常生活でのアンテナが鋭敏なわけでもないから引き出しが多いわけでもないし、

自分を客体におけるわけでもないし。

 

そんな自分はめちゃくちゃ普通で、だから大嫌いで、

この一年も本当にどうしようもくクソみたいな一年だったけど、

それら全部をひっくるめて俺の現状なわけで。

そしてそれでも明日はやってきて人ととしゃべり人に触れ続けてて生きていくわけだけだから、この宇宙に居続けるわけだから、

誰かに何かを言われ続けるんだろうけど、唇かんで、泥水飲んで、忸怩たる思いでやっていくしかないんだよな。嫌がられるほどのしつこさを見せつけていくしかないんだよな。

その先にきっと光があるんだろうから。その過程を経て俺は完全な球体になるから。