雑記:最近見たり聴いたりしたモノについて③

27も29も30も近い。お酒を飲んでも23時には切り上げる時期が近づいている。服はセレオリきれい目で固める時期が近づいている。健康を慮って食事や運動に意識を向け始める時期が近づいている。あぁ時間がない。憂慮すべき諸々を追いかけているようで、実は、僕らは常にそれらに追われ緩やかに死へと向かっているのである。抗えない下り坂を今日も無意識に進んでいる。

 

年末を前に、11月に見聞きした映画と音楽を適当にピックアップしてます。

 

【映画】

キャロル / トッド・ヘインズ

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脚本、物語展開、演出(特に映像の色彩面)、役者の演技と全てが圧巻。僕個人の映画偏差値は低いが、どこを取っても現実との整合性がとれていて必然性を感じるもであった。戦後アメリカという想像でしか語れない場所に対してこれが真実なんだと違和感なく思わされる、人間模様とその周辺環境のリアルさ。映画って面白いんだなと思わされた一作。

個人的に好きではない恋愛もので、初めて良いものだと思わされたのもまた自分にとっては衝撃である。いやぁ、今年1番。

 

何者 / 三浦大輔

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確信したことだけど、僕は朝井リョウが嫌いだ。それも大嫌いだ。その実イケイケ側の人間のくせにちょっと自分の環境で協調性がなく御山の大将ななれないからといって、亜流に目を向け、喰い物にして、亜流に逃れた肥溜めたちを上から目線で見ている気がするのだ。君たちってこんな感じでしょ?という知った風な姿勢が、態度が、見え隠れしてならないのだ。

映画は、就活といういくらでもスケールを大きく扱える話なのに(身近なことだからそう思うだけなのかもしれないが、日本において新卒就活はとても大きなイベントであるように思える)、どこか小さな話をしている感じがしたのが残念。内向きの暗さに終始していることがそうさせているのかなと思っているが、それは監督の演出故なのか。

暗い話に終始するならエンディングのどんでん返し(これもどんでん返しというほど意外性がなかった)とやらをもっとその深刻さと絶望と醜さを克明に映し出すか、それかいっそ唐突で話とマッチしないような明るさがあってもよかったのかも。二階堂ふみが広告代理店のアラサー人事となし崩しに関係を持つとか。

あと役者も最近の綺麗所を揃えている印象だけど、なんか違う。佐藤健out太賀inとか面白いのかも。

 

ジュリエッタ / ペドロ・アルモドバル

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緻密に整えられているという意味でとても美しい映画。最高だった。スペイン映画というと予測不可能で常識や倫理を逸脱したものという話を見たことがあるけど、基本的にそんなことはなく一つ一つのエピソードが細やかさ・その内容ともに極めて妥当に描かれていたように思う。

有限の罰が償却されるというエンディングはカトリックの強いスペインならではなのか?冒頭に出てくるジュリエッタの家の、ビビッドな赤が配色されたデザインは監督の特徴?それとも悩みがありながらもそれを忘れなんとか生きてきたその脆くも強い生を象徴したもの?などとあれこれ考えが巡った。

もっと詳しければもっと楽しめたのにと惜しまれる。こんなに良い作品なのに…。

 

マンガ肉と僕 / 杉野希妃

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音楽を中心に終始おどろおどろしい雰囲気が漂う謎の作品。もっと掘り下げても良いのでは?と思うような場所も粛々と(あくまで時間量的な意味で粛々と)進んでいくのだが、だからといって何かが足りないというわけでもない。そしてこの粛々とした無機質な雰囲気もおどろおどろしさの要因であろう。

内容は良くも悪くも予想を裏切らないもの。 杉野希妃は言うなれば鬼才なのかもしれない。それか奇をてらっただけの人なのか。僕は前者だと思うが、ここら辺はこれからの作品やより精通している方々の評論によって判断すればよいだろう。あとNumber Girlを聴きたくなる映画。

 

サニー 永遠の仲間たち / カン・ヒョンチョル

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感情移入をする作品ではなかったが、本当に良いと思えた作品であった。娯楽に全振りの映画版モテキを見ている気分。

内面の葛藤とか悲しくて重い場面というのも勿論あるが、この映画を一言で語るなら「明るくハッピー」。青春を勝手に歪めてしまった僕ですら、その忌々しき青春を想起させられる内容にも全く嫌な気持ちにならない。併発される辛さや軋轢、不都合に無駄にスポットを当てていないからだろう。

あと時代考証が素晴らしい。Girls just wanna have fun、Time after time、映画ロッキーなどなど…。単純にカルチャー好きとしてもたまらない小ネタが満載。

当時の韓国の時代のうねりの中でも女子校生たちの眼前の荒波は一大事で、そしてそれを満喫してるんだなとも思えて、少し自分の青春を受容できた。

 

ぼくのおじさん / 山下敦弘

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北杜夫御大のぼくのおじさんの実写映画。同じ監督によって同じく短編小説であるオーバーフェンスが素晴らしい実写化をされていたこと、北杜夫が好きなことの2点からかなり期待していたが、うーん…といった感じ。

内容は決して悪くなく、挿入される音楽なども良かったのだが、日本の部分をそこまで膨らませなくても…というのが第一に気になったところ。あくまでそこはおじさんの愚人加減を表す部分に過ぎないので、無理に膨らませる場所ではないように思える。

松田龍平はさすが。原作的にはおじさんはこんなにシュッとしてはいないはずなのだが、いざ見ると全く違和感がない。名優であるなぁ(詠嘆)。

 

聖の青春 / 森義隆

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従兄弟の影響で少し将棋に興味を持っていた時期があり(全く上達しなかったので結局何にもならなかったが)、常識の延長線上としてA級棋士くらいは知っていることもあり、お話は心にグッときた。下手に原作を読んでいる映画よりずっと強いバイアスが働いたことも影響しているだろうが、静謐さと情熱はしっかり映し出されていたな、と。

ただその理由は村山聖という題材が焦点をあてられる上で申し分ない人間だったこと、それを演じた松山ケンイチが素晴らしかったことにあるのでは、と思えたしまった。知っているからこそ問題なく楽しめたが、少し説明不足な感も否めない。まぁ余計な説明などなく熱量で押し切る(良い意味で)作品なのかな、とは思うが、ストーリーと演技で説明をすることも出来たわけで。

羽生さんを演じた東出くんも良かったとは思うが、題材の羽生さんが特殊すぎて物足りなく感じてしまった。これに関しては東出くんの演技が今一つとかは一切ない。

無理に見るほどではないけど、よくわからない映画を惰性で選ぶくらいならこれを見たほうがいいとは思う、そんな感じ。

 

リップバンウィンクルの花嫁 / 岩井俊二

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良し悪しは一旦置いといて一言、悔しいけど岩井俊二はやはり凄い。

陰鬱と生きる僕もあなたも幸せになっていいんじゃないですか?みたいな問いかけが他者や環境との相対比較による自己認識を通して語られる、というのは映画や小説でもよく見られるパターンだが、それにありふれた感を抱かせないのは演出故なのだろう。作品を通して存在感を出す白色とそれが持つ陰のある性格が、虚しくも重たい映像をより美しく感じさせ、そして映像を中心に物語をストンと心に落とさせる、そんな作用を持っていたように思う。

 

【音楽】

君の町にも雨は降るのかい / シャムキャッツ

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シャムキャッツ - すてねこ (MUSIC VIDEO) - YouTube

完璧。

 

For All We Know / NAO

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NAO - Bad Blood (Official Video) - YouTube

僕の軽薄短小な音楽知識では予想がつかない楽曲たちに完敗。取り敢えず安っぽくなく、知性がある。これは凄い。10年代中盤エレクトロに対する意識を変えさせられた一枚。

 

ソルファ(再録) / ASIAN KUNG-FU GENERATION

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ASIAN KUNG-FU GENERATION 『リライト(2016ver.)』 - YouTube

16年のオルタナティブロックという印象。これについての良し悪しをオリジナルのソルファと比較して語るのは邪道であるように思う。これももう少しちゃんとまとめたい。人の音楽の聴き方が分かるアルバムだと思う。

 

Night Driver / Busted

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Night Driver - YouTube

まさにpop×rock。Walk The Moonに似た、今夜の主役になれる感がたまらない、エモーショナルでハッピーで、少しだけドープな一枚。

 

ママゴト / Sugar's Campaign

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Sugar's Campaign - ママゴト - YouTube

去年出したFriendsがポップでキュートでそれでいてシャレオツだったSugar's Campaignから出てきた新譜。曲のセンスは相変わらず申し分ない、アプローチの多様さや目新しさという意味では想像の域を出ないものの、最初から最後まで綺麗に流れていく構成が素晴らしい。ともすればBGMかしそうだけど、一曲一曲がクールなので好きな人はすっと一枚完走しそう。

ただ、自分の知識量の違いもあるとはいえ、衝撃は前作の方が上な気もする。

  

朝井リョウを嫌う自分こそが朝井リョウそのものなのだ。マウントを取るんじゃない。逃げ恥に難癖つけてるお前もだ馬鹿。

 

※一丁前に映画批評などしていますが、どれも楽しく見られています。良いんだけど…くらいのテンションです。

 

 

プレイリスト作ってます、良ければ是非。