雑記:僕のベストアルバム2022
久しぶりに、やります。
なぜならば、やることにしか人生の答えはないから。過ぎ行く毎日を上手くまわすことだけ上手くなって、その過程で失っていった(=選択しなかった)ことに物憂げな顔で想いを馳せるような人生とは、一秒でも早く決別しないといけないんですわ。
というわけで、再生の手始めに、今年聴いた音楽のマイベストランキングについてのお話です。
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【ルール】
以下条件を満たす作品であること
・2022年に発売されたアルバム・EP
・アルバムを通し(曲順通り・途中停止無し)で1回以上聴いている作品
【判断基準】
出会ってよかったと思える音楽であること(ざっくり、以下4つの視点の掛け合わせ)
・ジャンルまたはバンドやグループの文脈において新奇性があること
・今後も長く聴き続けたくなるエバーグリーンな作品であること
・その人にしか出せない独自性を感じるアウトプットであること
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10位 Search + Destroy / Luby Sparks
■コメント
Luby Sparksは前作の時点ではザ・インディーロックという感じのバンドで、実際ドリーミーな曲も多かったんだけど、今回は一点して地に足着いた重厚な音楽を出してきたなと思う(勿論インディーロックが地に足着いていななんて言うつもりはないけど)。
で、こういう変化って「変化後のアウトプットがより良いか」は勿論「その変化自体が受容されるか」という点でも色々を言われやすい、まぁ何と言うかしちめんどくさい事象だと思ってるんだけど、そんなのどこ吹く風というくらいにその変化が自然と音楽に落とし込まれているな~と思う。
バンドマンの出自を考えると00年代とかの音楽(恐らくアブリルとか)を通っていると思ってるんだけど、先述の「その変化自体が受容されるか」みたいな観点でいうと王道の影響が顕在化しているのってやっぱりちょっと否定や難解さが是とされやすい世の中との相性が悪いと思うんだよな。
でも、そうしたことを特に隠すでもなくガツンとアウトプットしてきて、そのクオリティも申し分なくて、なんというか斜めな自分が恥ずかしいなと思うし、その若さの感覚がめちゃくちゃ尊いなと思う。
●●について語る時に▲▲が出てくるのは偽物…みたいな知識人仕草ってどこにでも存在して、広くて浅い人って一見するとこういう仕草との噛み合わせが絶望的に悪いけど、それはもうアウトプットのクオリティによって圧倒して、見せつけるしかないんだよな…。30代になった2022年に、再生し始めた2022年に出会ってよかった。
9位 LOVE ALL SERVE ALL / 藤井風
■コメント
ジャニーズと羽生結弦以外ではクソリプオバサン人数が一番多い男性こと藤井風の新譜。
個人的には前作が良すぎて、その後に出てきた各シングルたちはJ-POP覇王としての道を歩んでいる感は伝わるものの衝撃はそこまでだな~と思っていたら、こうしてアルバムとして並べられると本当に美しくて怖くて泣いちゃった…。日本において、POPとしてもR&Bとしても時代の先導者すぎて、10位以内に入れざるを得ない…
今さら言うまでもないけど、とにかくインプットが多くて、その落とし込み方が大衆になじみの良いそれになっているのって、要は本人の脳内で知的編集ができている(=付加価値を出せている)ってことで…。僕は仕事においてそれができているのか…ウッ…。
8位 The Car / Arctic Monkyes
■コメント
21世紀の先駆者Arctic Monkyesの新譜。アレックスターナー、37歳でこの昇華された音楽、マジで人生何周目なんだ…。
ありていに言うとモダンなロックなんだけど、例えばピアノが活きていた前作の流れがあるからバロックっぽい音楽とストリングスの取り入れが光る…といったように過去作品からの地続きでこの作品があるところがすごいと思う。そして、それは3rdのAMから始まっていたんだな…と。
僕は、恐らく多くいるであろう「アクモンは1stが最高!2ndもいいけど徐々に聴かなくなっちゃったな…いや良いとは思うけど…」みたいな人の一人なんだけど、その時にはもうアレックスターナーにはもっと先が見えていて、何ならこの作品の先もあるんだろうな、と思う。マジで見えている景色が違う。天才。
僕たち民衆を導いてくれる、もう一度言うけど21世紀の先駆者なんだわ…。
7位 ほぼゆめ / kabanagu
■コメント
ルックバックとか呪術廻戦とか、真空ジェシカとか粗品とか、僕たち(便宜上アラサーを僕たちとします)と同じ時代に青春をし、それを経験としてアウトプットに繋げているモノ・人たちが増えていると思う。
そうした人たちのアウトプットを見ていると、自分では何もしていないのに勝手にカタルシス感じたりやった気になったりすることがあるし、”青春”らしいものを勝手に受け取って勝手に気持ちよくなったりすることがある。ただ、僕はこういう有り様は完全に良くないことだと思っているて、かなり嫌忌している。
とここまで書くとこのアルバムをベスト10に入れているのがおかしいような気もするけど、なんていうかそういう御託はいらず、ただただ””普通にいい曲(群)””だと思ったんだから、その思いを変にひねくれずに吐き出そう、と思ったのでこうして今コメントを書いている。
僕自身が至らなくてつまらない人間であっても、カッコつけずに、逆にカッコ悪ぶらずに、混じり気の無い心で、いいと思ったものを正直に言いといおうと思いました。すべての想いの混濁の先にまっさらな気持ちになるだろうから、そうした心で話そうと思いました。
なんかコメントというより過去と未来の自分への私信みたいになってしまった。
(あと、このタイプの同年代がこれからどういうアウトプットを出すような成長をしていくのか、自分自身の在り方を見つめ直す上でめちゃくちゃ興味がある、という思いもある)
6位 Being Funny In a Foreign Language / THE 1975
■コメント
ベタに入れてしまった…。でも7位のコメントの通り、良いと思ったなら変にこねずにそれをそのまま出した方がいいはずなので。
1975について、個人的に一番好きなのは今作ではないんだけど、それでも今作が一番良いなと思うところもある。
アルバムとしては、美味しい食材を最低限の調理で最大限シンプルに出してきている感じ。それが最大に美味しいかどうかは別として、そのすごく原点的な感じを今の1975がやってくれていることにグッとくる。勿論大きくなった今やるべきタイミングだったのかもしれないし、どこかでcovidもあって自信を振り返ったみたいなインタビューも呼んだけども。
そして、その結果として?、愛とか幸福とか身近なことを歌ってくれているところ(I’m in love with you/Happiness…etc)にグッとくる。なんというかごく身近な周辺を世界として捉えているんだろうなと思う。
上座部仏教(確か)が「我執を無くすこと」を良しとしているとか、ニーチェのニヒリズムとか、(これらは僕の理解が足りていない気も大いにするが)なんというか突き詰めていくと一周まわって超越する、みたいな思考の巡りが確かにあるのかなと思う今日この頃。(最近だと宇多田ヒカルとかもこれに近いアウトプットをすると思う)。
自分自身、そういう道を目指していけばいいのかな?目指せるのかな?という漠然とした思いやそれに伴う不安があったんだけど、そんな中でこのアルバムを聴けた悦びと、そうした超越したstageに進んでいくバンドをリアルタイムで見られる悦びとがあった。
1975、個人も地球全体も代表するバンドといえる。ヲタク特有のクソデカ概念。
5位 日の当たる場所にきてよ / 宇宙ネコ子
■コメント
良い~。こういう音楽聴いて良いと思う、出力強いニューカマー*に感動しているこの感覚、音楽を聴いているな~と思える。
*…一応もう3rdのはずではあるが
確かなテクと音の大きさ・歪みがイカす演奏に電波っぽい歌声を乗せること自体は相対性理論くらいから長く定着している気がするし、僕はそこに感じられる「お前らこんなん好きなんでっしゃろ」感というか、商業的で安易で女性というキャラクターを一面的に使う感じとかがあまり好きではないと思っている。
だけど、シューゲ・ドリームポップとしての充実度というのか、曲自体とボーカルが淡々としているようでめちゃくちゃギターが波打っている感じが、悔しいけど、存在しない記憶を喚起させて心と脳を破壊してくる。
エモいという概念がずっと良く分かっていなくて言葉としてもなるべく使わないようにしていたんだけど、強いて言うなら「個人的な経験と一般的な経験とがリンクして、その共通部分或いはギャップの部分の輪郭を捉えたときに、そこに当時の自分を思い出し、それを一定許容する気持ちのこと」なのかもしれない。最後の段落、アルバムにあんまり関係ないけど。
「人を感心させて黙らせてしまうのは良い芸術ではない。良い芸術は人をインスパイアして新たな芸術家をつくる」ってリッチーブラックモアが言ってたような気がする(言ってないかもしれない)。いずれにせよ人を饒舌にして「私にも言わせろ」「俺の話も聞け」となる本は良い本です。
— ジロウ (@jiro6663) 2023年1月21日
4位 demon time / Mura Masa
■コメント
良い!まず音楽としての没入感がすごい。元々出自多彩な人ではあったけど、引き出しが多いのにアルバムとしての流れが自然すぎて、気が付けば聴き終わっている感じ(最近のアルバムらしく一枚の時間が短いのも影響してるんだろうけど)。
アルバム自体は意外と?明るくなっていると思う。コロナ禍の影響もあってとかく内省的なムーブが増えていると思うんだけど、コロナ禍で音楽を辞めることも考えたらしい彼が、ちゃんと心身の健康と向き合って、その結果としてこういう未来を向いた(ような気がする)アウトプットを出してくれているのが嬉しい。
2022年は、良くなった一年だったと自分で思っていたけど、振り返るとどこか自分にそう言い聞かせている部分があって、不出来な自分を一個一個潰していくために(それ自体はとてもいいことだが)、どうも生き急いでいた部分があったように思う。自分に対して投げやりと言うか、人生に対してやけくそというか。
ちょうどそうした似非加速をしていた時にこの曲を聴いていて、その時は躁状態としてこのアルバムが好きだったと思う。一方で今はちょっとそれが落ち着いたというか、2022年の取り組みがあまりよくなかったのでは?と思い始めているタイミングでこの曲を聴いて、そういうことじゃないんだよと思わされる意味でもこのアルバムの良さをかみしめている。
多分今の感情と人生の波はあと数か月でどこかに着地すると思っているので、その時にまた聴いてみたいなと思った。
個人的に光となる一枚。
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3位以内を語る前に、ここに入れなかった(入らなかった)けど良かった作品を少々…
世界はここで回るよ / 君島大空
天才のそれ。つい最近アルバムとして出たけど、この曲単体では22年に発売。シングルなので今回入れられなかった。
僕の感想は以下がすべて
https://twitter.com/Tire9a/status/1598710480226643968?s=20&t=NgtVmukF5p4Qw6tpke9Pmg
(四季シリーズ) / Weezer
リバースクオモ最高だよ…。全部良くて、四季シリーズで一つ感もあったから入れられなかった。
ポップでロックでファニーでデストロイで、個人的な原点音楽だ。長く付き合っていくんだろうな。
Hotel Insomonia / For Tracy Hyde
年間ベストみたいなやつは12月発売がどうしても不利になる。このアルバム、めっちゃ良かったから発売時期によっては聴きこんでベスト10だったんじゃないかな。
日本のシューゲイザーの引っ張る存在だと思う。解散惜しすぎる。
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戻ります。
3位 Blue lev / Alvvays
■コメント
これも4位と同じく、とにかく音楽として好き!全部いいんだけど、Belinda Says(リンクの曲)が特に好き。引き出しエグい。そこで転調?!とか。
邦楽洋楽という括りはそろそろ…と思ってやめた身で言うのもなんだけど、今年No.1洋楽だった。いやちょっとどんな文字よりも聴くのが一番なので是非。逆に書けん。
2位 Les Mise Blue / Syrup16g
■コメント
今年は1位のアルバムがあまりに断トツすぎて、このまま終わっていくんだろうなと思っていた。この新譜を聴くまでは。
何歳になってもどこか心は成長していないままで、なんとなくイメージしていた、或いはイメージすらしていなかった年相応の大人というものには到底近づけていないなと思いながら今日を生きている。こんな仕上がりになるとは思っていなかったな~と、自嘲しながら今日を生きている。
そうした成熟すべきなのに成熟していない生っていうのは、ふとした瞬間にそれを突き詰められてめちゃくちゃ惨めで情けなくなる。そうした時に、不出来を笑って、不完全もまた味だよねなんて言い訳をしながら、いなたいキャラを解離的に仕立て上げたりする。
でも、そういう人生は、もうその先に何もないんだよな。不出来は、コンプレックスは真正面から対峙して、一個一個潰していくしない。その過程はずっと惨めだしカッコ悪いし、それこそ良い歳して何やってんだって気はするけど、やると言ったことはもうやるしかない。やることにしか人生の応えはないんだから。
そう思って2022年、しょうもないことでもやり切る、その一秒を削り出して、適当な仕上がりでそれっぽい言い訳はしない、と思ってなにかを頑張ってみた(何が悲しいってこんなことは同年代の人は既に通過しているってことだ)。
ただ、syrupの新譜を聴いてしばらくしてから気づいたんだけど、このアプローチは一つ問題を抱えている。結局、この半ば自傷的な頑張りとそこに内在する気持ちそれ自体が、青春を経て大人になっていく自分の呪縛の中でのモノにすぎないということ。
実際、僕自身27歳を超えてどう生きようとなった時に、なんとなく悟ったような・或いはバランス感覚のいいような生き方が正なんだろうとは思っていながら、そこに至る過程は全然見えていなくて。それ自体に不安や絶望を感じてはいて。今思うと論理の飛躍甚だしいんだけど、だからなのか上述の自傷ムーヴにたどり着いてしまったんだと思う。
で、ようやくアルバムの話をすると、上記のような色々から解放されてもいいし、されなくてもいい、すべていい意味でないまぜにして、全て飲み込んで、努めて淡々と来たる未来を受容し、今日を積んでいくことが大事なんだな、とそんなメッセージがあるアルバムだな、と思う。
大人になる過程(しかも上述の通り成熟はできていない)の苦しみ・自分が長い死に向かうだけの人生をどう生きていくか分からない苦悩・自分だけが変われていないという焦りは惨めさ・自分だけが変わってしまったという絶望・何も成し遂げていない何者でもないという厳然たる事実…。それはある、それでいい。ただ、あることとそれに縛られることとは全然違う(そういう意味では解放されるというニュアンスなのかもしれないが)。
そして、何よりそれをsyrupが歌っているのがすごい。ずっと暗かったsyrupが。「君に存在価値はあるかそしてその根拠とは何だ」なんてことを歌っていた、しかも「生活」というタイトルでこんなことを歌っていたsyrupが。
僕は多分これからも苦しむ。自信と深みを裏付けるような知識も経験も乏しいくせに、一丁前にプライドと理想だけはデカくて、そのうえ自己愛も強くて、挙句自己愛が強いからこそ変なところで自分を守るために自傷行為に逃げるような僕はこれらからも苦しむ。でも、大丈夫かもしれない。迷いながらこのアルバムをふと手に取ることで、もしかしたらやっていけるのかもしれない。その日一日を、淡々と。
長々書いたアルバムを越える第一位はこちら。正直オッズ1.1倍くらいでした。
1位 BADモード / 宇多田ヒカル
■コメント
黙って曲順に通しで聴いてください。以上。
今年もやっていくか~。
何かやっていったら、人生の答えに近づけるかもしれないから。